Recently updated on 8月 27th, 2019 at 07:35 pm
先日、ドイツのTV番組から取材を受けました。取材スタッフは全員で4名。取材内容は日本での美容外科手術で人気のある手術、男女比率、将来の手術トレンドなどの一般的な質問と「日本人女性の美に対する憧れについて」という深い質問でした。日本人が美容外科で施術を受けている内容は、二重(目を大きく見せる手術)や隆鼻術(鼻を高くする手術)やオトガイ形成術(顎を作る手術)などといった西洋人の顔つきに近づける目的の手術であるため「西洋人の顔」が憧れなのかという疑問でした。
私は個人的な意見と文献を交えた学術的な意見について回答しました。まず、個人的な意見は西洋人の顔つきは美しいとは思いますが、そこが目的ではありません。ハリウッド女優の写真を持参して「この女優さんのような目にして下さい」という患者さんはいません。写真を持って来院される人の多くは日本人の女優さんやアイドルの写真です。また頭蓋骨および顔面骨を含めて白人と東洋人では形が全く違います。もしも白人の様な顔が目的であるなら顔面骨から手術を行わなければなりません。また、顔面骨と頭蓋骨はつながっているので頭蓋骨も手術が必要です。しかし頭蓋骨の骨形成術を美容外科の目的で行うことはあり得ません。すなわち白人にはならず、目的が違うという結論です。
文献的には形成外科で一番メジャーな雑誌に掲載されていた論文ですが、”Mikamo’s Double-eyelid Operation: The Advent of Japanese Aesthetic Surgery”というタイトルで「日本における美容外科の始まり」についての論文です。この論文はMikamo先生が1896年に中外医事新報で書かれているものをsuzanne先生が英語に翻訳し、考察を加えて1997年の形成外科の雑誌に掲載されたものです。内容は二重の手術は西洋人化するための手術ではなく平均的な日本人のまぶたに近づける手術であり、単純にその女性の魅力をあげるために行われていたものでしたが、関東大震災と第二次大戦の後に欧米からのメディア(映画やコマーシャルなど)が大量に日本に流入してからはイメージ的に白人に近づける手術といっても過言ではない。という内容でした。
今回このような取材を受けて逆に思ったことは、私たちは西洋人の顔に多かれ少なかれ“美しさ”は感じると思いますが、西洋人は東洋人の顔つきに対してどこに“美しさ”を感じるのでしょうか?

