乳がん患者様を対象とした、乳房再建術。
最近、シリコンインプラントを用いた再建、及び萎縮した皮膚の拡張を目的としたエキスパンダーの使用が健康保険適応になりました。
美容外科診療においても、しばしば乳がん手術後の乳房の再建について相談を受けることがあり、保険診療における乳房再建とはどういった手順で、どんな施設で行われるのか。
また基本的なシリコンインプラント、エキスパンダーの知識を再確認するため、過日、乳房再建用エキスパンダ/インプラント講習会に出席してきました。
詳細は非常に難しいので省きますが、保険診療で乳房再建を行う施設には、形成外科専門医あるいは乳腺外科専門医で、この講習会を受けて、乳房オンコサージェリー学会に入会し、かつ資格申請した責任医師と呼ばれる医師が必ず常勤で勤務する施設で行われます。
うーん、書いていても難しい。
乳がんを切除した時にすぐ、それから時間が経過した時に、エキスパンダーという皮膚を拡張する器具を用いるか、用いないで再建するか、でまた、細かく手術は分かれていきます。
エキスパンダー、シリコンインプラントという形成外科、美容外科医に馴染みのある器具が主役の治療になるため、全体を仕切って話をまとめていくのは、形成外科専門医の責任医師が良さそうだ、という感想を持ちました。
それは、全体のディスカッション、質疑応答の中でもはっきりしていました。
質問する際、『形成外科専門医の⚪️⚪️です』あるいは『乳腺専門医の⚪️⚪️です』といった形で質疑応答がなされたのですが、残念ながら乳腺専門医の先生方の質問の大多数が、形成外科専門医の立場からすると?、といった質問が多く、残念なものだったのです。
例えば、マンモグラフィーとよばれる乳腺の異常を見るための検査。
『シリコンインプラントを入れたあと、マンモグラフィーをしてもいいですか』
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乳癌で乳腺を除去した患者様にマンモグラフィーをする意味はあるのだろうか?
もしかすると、この先生は、美容外科でシリコンインプラントによる豊胸手術を受けた患者様の乳腺に対しマンモグラフィーの撮影をして胸を挟んだ時にシリコンインプラントが壊れないのか?、と聞きたかったのか。
これだと、全く話は根本から違い、質疑応答としてはお粗末なもの、となります。
次に、実際の再建手術後の手術結果とはどういった程度、レベルにあるものか?
乳房再建=バラ色の人生、とは、かなり離れたものであることが再確認できました。
残念ですが、仕方ありません。片方の乳腺組織が無くなってるんですから。
再建を数多く行っている先生自ら、『再建は生きる活力を呼び起こすもの』とし、数多くの歓迎されざる合併症は付き物と語られていました。
正常な乳房の手術でもトラブルが多い豊胸。
乳癌手術後、となれば尚更だと思います。
眼瞼下垂の手術は万能ではないと、このブログでも述べさせていただきましたが、乳房再建術もまた、乳ガン患者様にとって『万能ではない』のを確認できたことが、今講習会の、最高の収穫であった気がします。
医者はあくまでも、治るための手助けをするだけで、直すなんて、とんでもない。
こんな言葉が頭をよぎった講習会でした。

